子供が腰が据わるようになった5か月ごろから、最低でも月に二度は支援センターに行こうという誓いを立てており、最近では子供の運動や発達のために週に3回は行っている。
毎日いろいろな子供たちと時間を過ごすことになる。ヨウのように、一人目の子供で、母と二人で来るというケースが一番多い。三世代同居しており、普段はじじばばと過ごしているがそれが気づまりで…という人もいる。そして、子供を複数連れて来る人もいる。
兄妹、兄弟、という組み合わせはなぜか見たことがない。いつも姉妹、姉弟だ。どうしてなんだろう?
私もヨウの下にもう一人子供がほしい、と漠然と考えているので、そういうきょうだいでやってくる人たちには自然と目を向けてしまう。すると、共通点に気が付いた。
上の子に対する母親の態度が苛烈なのだ。これは3,4組のきょうだい連れの家族のどれもそうなのだ。みんな姉の方に対して、「どうしてそんなことするの」「お姉ちゃんでしょう?」「ちゃんと待ってて!」「自分で歩けるでしょう?」「ママは○○(下の子)のお世話してるんだから」と、下の子の世話を理由にして、上の子を突き放す。
上の子だって就学前の子供だ。当然、だっこをせがんだり、小さい子からおもちゃを取り上げたりする。それらを一方的に断ったり、叱りつけたりする。
お母さん方の気持ちもわかる。何しろ小さい子供というのは手がかかるのだ。
私のように、大して疳の虫が強いわけでも体が弱いわけでもないヨウ一人でも、ふらふらと歩いて流れるように興味の対象を変えるのに付き合うだけでヘトヘトだ。それに加えてもう一人、となっては、自分でできることは自分でしてほしいと思うのは必然だろう。
とはいうものの、小さなお姉ちゃんたちの気持ちもわかる。自分の妹やら弟やらがいるばかりに、先日までなんでもしてくれたママが、一気に自分のことには無関心になり、妹やら弟やらの世話ばかりしている。たまに以前のように抱きしめてほしい、わがままを言って膝に抱き上げてほしい、あーんしてご飯を食べさせてほしい、ストローを口元に持ってきてほしい…
でも大好きなママに嫌われたくないから、ママのいうことを聞く。我慢してできることは自分でする。問題を起こさないように、おもちゃも余ったものを使う。ママはそうすれば怒らない、でも褒めてもくれないけれど。
ママからキーキー言われて、しゅんとしたお姉ちゃんたち。
かわいそうだなあと思った。そして、姉もこういう目にあったんだろうな、と思った。
姉なんかはもっとだろう。母はただでさえ子供の面倒を見ることができない人だった。姉は自分で自分のことをするようにきつく言われ、できなかったら叱られ、役立たずと言われ、さらに私の子育てまで押し付けられたわけだ。その混乱、悲しみ、憎しみは想像に難くない。
6歳という年齢差もそれらに拍車をかけたはずだ。同年代の子はそんなに小さな妹はいない。もっと年の近いきょうだいと遊んでいる。年の近いきょうだいの面倒をみてやっているというよりは、一緒に遊んでいる、という関係。自分だけが、こんなに小さな妹の育児を任されて、自由に遊ぶこともできない。
その怨嗟がすべて私に注がれても無理はない。ただし、その恨みを本当に向けるべきは母親だ。
私は自分の姉をかわいそうに思うと同時に、やはりそれらのつけは母が払うべきだと思う。
姉にはそれを理解してほしいと思う。
仕方がなかっただろう、姉も十分可哀そうだった、でも、私は恨まれる筋合いではない。
そして私は、もし我が子にきょうだいができたときも、ヨウのことを一人の子供として扱いたい。兄ではなく、私の子供の一人として扱いたい、と強く思う。