皿を洗っていると、際限なく親たちへの恨みが湧き上がってくる。これは不思議なことだ。
最近では毎回のことで、このせいで心がけば立つのか、このおかげで子供の前では落ち着いていられるのかわからない。
皿洗いは、唯一私が命じられても断った家事で、悪い思い出はあまりないというのに。
今日は以下のようなことをわーっと考えていた。
「親、やっぱり今になって私に老後を見てほしいとか思い出したんだろうな。姉より私の方がきついこと言わない、御しやすいと思ってただろうからね。私が離婚してニートになって戻ってきたときなんて、完全に失敗作扱いで腫れ物に触るみたいだったくせにさ。
姉は性格がきつくて自己主張が激しかったから、中学生くらいから親はなるべく距離を置いていたけど、姉が臨床心理士の資格を取って玉の輿に乗って年に1,2回顔を見せるだけになってからものすごい成功例として大事にしてたもんね。
私が結婚して、嫁入り先の家で私がどんなひどい目に合っているか、電話で泣いて訴えたのに、帰ってこいって一度も言わなかったもんね。家に帰ってみたら、私の部屋は無くなって本置き場になってて、姉の部屋はそのまま姉の部屋としてあるし。リフォームしたときに慌てて私の部屋を作ったけど、しらじらしい。一度もその部屋で寝たことないわ。私が安定した職について、安定した職についているイノと結婚してから掌を返してきてさ。ふざけるなよ。昔からいらない子扱いしていたのを、今更扱いを変えたところで忘れないよ。
私が小学校で毎日同じ服を着ているのをさらし者にされたのも、全校生徒の中でたった一人ブルマで1キロ走らされたのも、全然身に覚えがないんだもんね。私が言わなかったから…とか思ってるんだろうな。都合の悪いことは全部私のせいなんだから。茶の間に置いてある大きな食器棚も、でかいだけで収納力がいまいちで使いづらいのを私が指摘したら、『あんたがこれがいいって言ったからこれにしたのに』って私のせいにした。馬鹿じゃないの?私、その当時6歳か7歳だよ。そんな子供の言うことを鵜呑みにして、家のサイズに合わない食器棚を買ってきて、子供のせいにするってどんな脳みそなの?
そういえば、何かをこぼしたり、壊してしまったり、汚したりしたときも、お母さんは『この子は、わざとやって!』って怒ったよね。わざとなんてやってないよ。でも人間だもの、しかも小さな子供だもの、手を滑らせたり、うっかりしたりってことはある。どうしてそれを『わざとだ』なんて断定したんだろう?
しかも、『わざと』そんな破壊行動を小さな子供がとった、と本気で思ったのだとしたら、なぜそんなことをわざとしてみせたのか、親なら考えないといけないよね。親やだれかに何らかのサインを出しているっていうことなんだから。それなのに、お父さんもお母さんも、そんなことは二度とするな、と怒って私を殴ったりヒステリックに片づけたりするだけで、私の気持ちに寄り添おうとは全くしなかったよね。もし私が無意識的にでもわざとそんなことをしていたのだとしたら、たぶんちゃんと構って、子供として扱ってほしかったからだと思うよ。
私はそんなふうにちゃんと子供として注意を払うことすら惜しまれたようないらない子どもだったのだから、今更面倒を見てほしい、くみしやすいはずだからとすり寄ってこられても困る。
その子ができたために結婚せざるを得なかった、ある意味運命の子供であるところの姉に面倒をみてもらって。」
いつになったらこの噴きあがる恨みが鎮火するのか。